§ ポロ §

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「ねぇポロ…君は此処にいる理由を覚えてる?」 ポロからの返事はなかった。 「ポロ?寝てるの? いつも言葉の勉強だと言って起きてるのに。 …僕が此処にいる理由を忘れても…キミが来た日は…理由は忘れないよ。」 ポロは元々この部屋を訪れた蜘蛛の魂だった… 「ようこそ迷宮ノスタルジックへ。 あぁ…今回の魂は蜘蛛ですか…。」 虫や動物等の魂が来ることもある。 ただ人間の魂と比べると少ないだけだ。 迷宮ノスタルジックは魂を選ばない。 「蜘蛛では喋りようがありませんね…。 魂に直接話し、問いかけます。 良いですか?」 そこで蜘蛛の魂を見ると…恐ろしく悲しい魂の記憶を見た。 ボクはママに逢いたいんだ。 ママと過ごした時間はとても少なかった。 それでも…とても暖かくて…僕達兄弟を守ってくれていたことを覚えてる。 生まれてからずっと守ってくれてたんだ。 初めての脱皮のとき、ボクはトロいから…一番最後だったんだ。 ものすごくお腹がすいてた。 脱皮のあいだはなにも食べてなかったから…。 みんな何か食べてて…ボクもそれを食べた。 お腹がふくれて、ママがいないことに気付いた。 それに気付いたボクは、兄弟の中で一番トロかったのに、誰よりも一番に外に出た。 初めてうちの外に出た。 すごくすごく広かった。 ママは何処かなって探した。 1日中探しても見つからなかった。 うちに帰ってみると、兄弟の大半はみんな外へ出て行った後だった。 だから聞いたんだ。 みんなもママを探しに行ったのって。 そしたらこう言われたんだ。 「ママはさっきみんなで食べたじゃないか」 って…。 そぅ…ボクがさっきお腹がすいて夢中で食べたのはママだったんだ…。 あんなに守ってくれたママを…ボクは食べてしまった。 脱皮に入るまえ、ママは頑張ってねってボク達に言ったんだ。 なのに…なのにそんな大好きなママを…ボク達は…ボクはママを食べてしまった…。 みんな何とも思ってなかった。 脱皮をしたときに…心まで脱皮してしまったのかな? ボクは脱皮できていないのかな? …ママを食べたのが怖くなって…必死に外へ飛び出してママごめんなさいって謝った。 ママごめんなさい、ママごめんなさいって。 何日もそうしているうちに…ボクの体は動かなくなった…。 §
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