序章『旅立ちの朝』

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普段、その気になれば、この学園をまるごと全部、一夜にして灰にするとまで言われている彼女が、かすり傷一つ治せない。 故に彼女は、入学後三年を経ても尚『二級』魔術師なのである。 人には得手不得手があるとはいえ、ここまで極端な例は『千人に一人。一万人に一人』とまで言われている。 『千に一つの魔女』とは、彼女の類いまれなる魔術の才能に対してではなく、『ヒーリングが使えない』という、ただ一点の事実に由来する、極めて不名誉な二つ名であった。
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