35 新しい命

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忘れられない事が幾つかある。 背丈程の冷蔵庫を倒した事… 理由は何だったか分からない。 とにかく、冷蔵庫を倒そうとするから・私は倒させまいとして、体で支えた。 「どけ‼ ケガしてえのか⁉」 冷蔵庫は倒れた。 居間は水浸し…。 どこにこんなに水が入って居るんだろう? と思うほど水浸し… いつも、皿やガラスや、壁の穴ならTが帰って来るまでに片付けられたけど、 これはダメだった。 「何があったんだよ?!」 疲れて帰って来たTは、まず部屋の片付けからやらなければならなかった。 それから,また、別の日は廊下に設置されてた消火器。 家の中に向かって撒き散らした。 家中真っ白! あの中にベージュ色の.石灰みたいな粉が、こんなに詰まってるもんだと、初めて知ったよ。 息も出来ない。 目も開けられない。 苦しくて、中になんて居られない。 終わると、裏の田んぼに消火器の空を放り投げた。 やるだけやると、どこかに行く。 帰って来てまた,Tは黙々と掃除をしてくれた。 Tは毎回毎回、そんな有り様を、茫然と見ていた。 あの頃の睡眠時間は2.3時間だったと思うよ。 10月27日 帝王切開で三女が生まれた。 Tが1人じゃ心細いからと、Kさんに来て貰って居た。Kさんが「Tさん、産声を聞いた時、目をウルウルさせてたよ」と後で教えてくれた。 4人帝王切開で産んだけど、下半身麻酔は初めてで… 初めて我が子の産声を聞いた。 入院中は母が来てくれて居て… その間、息子は家に居なかった。 入院中に息子から「おめでとう」の電話が来た。 喜んでくれて居た。 何となく、この子が幸せを運んで来てくれたような気がした。
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