5 ドメスティックバイオレンス

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何がどうなったのか、分からなかったけど、本気だと言うことは分かった。 「私が何したって言うのよ⁉」怒鳴り返した。 火に油だ。 「ぶっ殺してやる‼」 カウンターの向こうから、出刃包丁を突きつけてる。 私も頭に来ていたから、 「心臓はここだから、一発でやりなよ‼」 「おう‼やってやる‼」 カウンターを乗り越えて来た! 私はドアに突進して、走った。 走った。 走った。 走った。 追って来る‼ 捕まったら殺される‼ 幸い、Sは相当飲んでて、ハンデがあったみたいで、追いつかれる前に交番が見えた。 振り向くと、Sは向こうの方で止まって、こちらを睨んでいた。 言葉も出ないほど、ハアハア言ってる私を見て、お巡りさんは、いっぺんに眠気が飛んだようだった。 「どうしました⁉」 「誰かに、追いかけられたと思ったんです」 お巡りさんは外に出て、今、私が走って来た道を見る。 夜中の路上には、誰の姿も無い。 「勘違いかも知れません」 しばらく、そのお巡りさんと話して 「送りましょうか?」と言われたのを遠慮して、恐る恐る店に戻ると… Sの姿は見えなかった。 お巡りさんを連れて来ると思って、逃げたんだろう。 その日を境に、SのDVは、一挙に表面化して加速していった。
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