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8 誕生
実家に転がり込んで、まず・Sがやったのは合宿で免許を取りに行った事。
これは、おじさんがやってる土建屋で働く事になり…
免許が無ければ話にならないって、しょうがない事なんだけど・・・
2週間で取れる筈が、ちんたらやってるんだか3週間かかった。
そして、帰って来た時‥‥
“送って来て貰った”と言って、女の子を3人連れて来た。お茶を飲んだらすぐ帰るから‥‥
あっけらかんとして、そう言うSを父も祖父もどんな思いで見ていたのか‥‥
まるで、ここが自分の生家のように振る舞って居た。
翌日から,Sはおじさんの土建屋に働きに行った。
平均年齢がかなり高い会社で、私と同級生の息子の他は、じいさんばっかの弱小土建屋。
Sは戦力になる。
だけど‥おじさんは人格に難ありの人で、他人の不幸が何より好きなお下劣人間だった。
ウチが幸せになる事なんか、黙って見逃す筈が無かった。
Sの酒ぐせの悪さは、すぐに見抜かれて、何度となく人前で失敗させられた。
そして…
「○○の婿は酒ぐせが悪くて、ロクなもんじゃねぇ」と言うレッテルを張られてしまった。
閉鎖的で保守的な山間僻地で、そんな噂が立ったら…
それはもう、致命的だ。
どんなに仕事が真面目で、頑張り屋であっても…
まともな人は相手になんかしてくれない。
狭い村でSは孤立して行った。
祖父は父と違って、気性が激しくモノをはっきり言う人だった。
障子一枚向こうにSが居るのを承知で
「ドコの馬の骨とも、知れねえ者を引きづり込みやがって‼」
そう言った。
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