1 春‥出所

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朝‥ 10時ごろ、本の配達の仕事中‥ 道が混んでて、イライラしながらものろのろ進んで居る時、 携帯が鳴った。 知らない番号だった。 それでも、誰からかすぐに分かった。 「もしもし」 運転中だけど、出る。 「お母さん…」 「うん!」 瞬間、こらえていた思いが吹き出した。 「○○ー‼」 後は声にならない。 ああ、ああ、ああ‥う、う、う、う 「お母さん…泣かないでよ」 「うん」 「泣くなよ…」 … … とにかく、車を脇の団地の中に入れて止めた。 話をしようとするけど、言葉にならない。 「出たよ。帰るから」 「うん!おめでとう」 「ありがとう」 電話が来たら、…余計な事は言わないで、 それだけ言おうと決めていた。 息子の名前を、直接呼ぶのは2年?3年ぶりかな? 今日3月7日、6年半ぶりに出所した。 『迎えに来なくていいよ、ちゃんと帰るから。大丈夫だよ。帰るから。』 そう手紙で言って来たから、私は普通に仕事していた。 たぶん、出たら電話が来るだろうとは思って居たから・心の準備は出来てたし、 なるべく普通に明るく出ようと思って居たのに… やっぱりダメだな… 団地の脇でしばらく泣いた。 自由になれた息子に… 良かった!と晴れ晴れした思いはある。 だけど、不安の方がはるかに大きく暗雲となって胸に広がる。
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