2 回想編

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いろんなお客さんが居たよ。 サラリーマン、土建屋、学生、医者、自衛隊、もちろん・アメリカ人も来た。 赤線街と言っても、外れの方だったから常連客が多くて‥ おばあさんママが1人でやってる割には、けっこう繁盛してたと思う。 私の住まいは、店の二階…六畳一間。 お勝手とトイレは付いていたけど、風呂は無かったから… 近くの銭湯に行くんだよ。 余計な物は持たないで、着替えだけを車に積んで、出て来たから… 布団は、ママにもらった。 後は・おいおい必要に応じて買えば良い。 第一、お金なんか無かったんだから… 面白かったなあ。 毎日がお祭りみたいだった。 1ヶ月もすると、この町にも、人にも慣れた。 運転免許を取る時に、意気投合して、それ以来仲良くしてる友達を呼んで、一緒に暮らし始めた。 女の子だよ。 ずっと水商売をやって来た、ユリはワールドには勤めないで、時給が良いからってバーに行き始める。 カトレアって言ったかな? 同じ水商売でも‥ 中身は違うようだったなぁ。 だいたい着る物が違うんだよね。 ヒラヒラふりふりの、ホントに女っぽいドレスで出勤してたっけ。 こっちは下手すりゃジーンズでも良かったからさ~、なんかよく分からない世界だよね。 3ヶ月くらい経った頃だと思う。 よく覚えてないけど… 常連客が若いバーテンを連れて来た。 仕事中のバーテンを気に入ったからなんだか、連れて来たかったんだとか… 「何にしますか?」 って、お絞りを出しながら聞く。 ジーッと顔を見てて返事もしない。 目に特徴がある、割といい男だった。 バーテンだもの、女にはそりゃモテるだろう。 「何にしますか?」お通しを目の前に置きながら、私もバーテンから目を反らさずに聞く。 「ああ‥ビール」 「はい!ビールですね?」わざと聞き返す。 「ねえ、俺と一緒にならない?」 ナンパもいろいろあるけどさ、二言目に言うかね?! 「条件があるけど、それを全部クリアーしたら良いよ。」 「何よ?言ってみなよ」 「チビ・でぶ・ハゲ・ヒゲ・年下は却下!」 「それだけ?」 「まだある! タバコをくわえたら火、コップを持ったら注ぐ。 それから…婿養子に来る事!」 「全部クリアー‼ 俺、ぴったりだよ。約束してよ! 俺と一緒になるって!」 「婿養子だよ!」 「良いよ~。 俺・家族が居ないから、家族が欲しい!約束だよ!」
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