30 卒業式

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30 卒業式

母には…ずっと息子の事を隠して来た。 母がどんなに息子を愛し可愛がってくれたか分からない、わんぱくでも、元気に育ってくれればいい。 そう願って来た筈だ。 私にしたって、そう願って居るさ。 だけど、現実は普通の学校には行けず、教護院で卒業式を迎える。 話さなければならないけど… 母はどう思うだろう? 「3月○日、○○の卒業式なんだけど、行く?」聞いてみた。 「そうよなぁ‥ 行ってみるかなぁ」 「うん、じゃあ,迎えに行くよ」 父は…来ないだろう。 卒業アルバムは地元の、本来の学校で作って貰った。 担任のT先生が写真を撮りに来てくれたらしい。 よく欠席者が端っこに、別枠で載ってるような‥ あんな写真が、申し訳程度に載って居る。 「こんなの要らない」と言って、自分の写真の顔を黒く塗りつぶして居た。 分からなくもないよ。 卒業式当日は、前の日から母を連れてきて泊まって貰ってた。 翌朝、娘達が学校に出るより、ずっと早くに母と出かけた。 「どこに行くんだ?」と母が怪訝に思う訳だ。 学校とは逆の方向に、車を走らせてるんだから… 「うん、○○は今、あそこの学校じゃないんだ…」 私は大まかに、今までの経緯を説明した。 母はずっと黙って聞いて居た。 その表情からは、心の内は分からなかった。 少なからぬ衝撃だったと思う。 「今日、一緒に帰れるのか?」 最後にそう聞いてた。 「いや、まだ帰れない。 だけどすぐだよ。 あと、何日かで帰ってくるよ。 黙ってて、悪かったよ」 「うん…」
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