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Tが言ってた「女房とはうまく行ってない、家の中に俺の居場所は無いよ」と言うのは…
どうやら本当の事だったようだ。
そして、仕事も…
親方である叔父さんはともかく、一緒に働いている従兄弟が、鼻持ちならない嫌な奴で折り合いが悪い。
辞めたいと言ってたね。
真面目な人だから…言えずに、1人もんもんと悩んでいたらしい。
そんな状況で、3日に一度くらい会ったかなぁ?
「家に帰りたくない…」Tはぽつりと言った。
「じゃあ…帰らなくて良いよ」
始めはそんなつもりはなかった、こんなに惹かれるなんて…
“一緒に居たい‼”
“この人の喜ぶ顔が見たい‼”
それが、愛情の原点だと思う。
そこには、打算も計算も、見返りを期待する気持ちも…ない!
あるのは“好き‼”という思いだけ。
こんなに、マジになるなんて…
夢にも思わなかった。
奥さんとは親同士が友達で、ちょうど年頃の娘と息子が居るから…
と会わされて結婚した。
恋愛じゃない。
そんな風に言って居た。
ずっと真面目に生活して来て…
ずっと、良き夫、良き父親をやって来て…
Tはある日、崖から飛び降りた。
文字通り飛び降りた訳じゃないよ。
身1つで、家を出たって事だよ。
何日かしたら帰るんだと思ってたけど、本当に…
家も仕事も捨てたらしい。
って言うと何て軽い男だと思われるかも知れないけど、違うよ。
本当に…家が苦痛だったし、仕事も嫌だったらしい。
今まで、我慢し続けて…もう、自分に嘘をつくのはイヤだ‼と思ったんだって。
男なら仕方がない、責任があるんだからね。
私と言う受け皿があって‥「帰らなくて良いよ」と言う一言が、背中を押した。
と言う事だね。
私は‥浮気される方にも問題がある。と考えるタイプだから…彼の場合、安らげる空間を作ってあげなかった奥さんに非があると決めつけた。
自己弁護よ。
なんと言ったって、泥棒猫に変わりはない。
Tは‥家にずっと、ずーっと居るようになった。
それで、改めて子供達に紹介する事になる。
だけど,息子の事をTに説明するに当たり…
結婚は難しいと思って居たから…
初めは曖昧にしていた。
で…「俺らは何なのよ⁉」となじられて、決心したようなものだ。
「私の背負ってるモノは、半端なモノじゃないから…
無理だよ。
嫁にも行けないし…」苦渋の決断だった。
そしたら、「俺が半分持ってやる。
俺がそっちの籍に入れば良いんだろ?」
Tは事もなげに言った。
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