32 3回目の結婚

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一緒に来てくれ…と言うから、行ったよ。 奥さんって、スラッとした美人だった。 何で、不満なんだか不思議な気がした。 私よりもずっと良いと思う。 家の中も“うわぁ!こりゃあ‥やり過ぎだわ!”と思うほど、 どこもかしこも綺麗に、整然と片づいていて、ガス台なんか、顔が写るほどピッカピカで… 玄関にあるスニーカーも、シミ1つ無かったよ。 私なんかそれだけで、萎縮しそうだった。 「お前何考えてるの⁉」 お母さんが泣きそうな声で聞く。 「すまない…」とT 「お父さん帰って来てよ‼あんたがこんな事するなんて‼」 奥さんが責める口調で言う。 美人なだけに、冷たい感じがする。 ひがみかな? 「すまない… もう、一緒にやって行けない。 俺と別れてくれ‼」奥さんに頭をさげる。 「バカな事言うんじゃないよ‼ 子供達をどうするの⁉」 とお母さん。 「…」 「○○さん‼」 奥さんが私の方を向いて、きっぱりした口調で 「この人を突き放して下さい! あなたが突き放してくれれば、帰って来ますから。 お願いします!」 そう言った。 「お前が居ないのに、お嫁さんに世話になってる私はどうしたらいいの⁉ お父さんにはTが家に帰るまで、帰って来るな‼って言われて来たんだから」 お母さんは、困り果てて居た。 「分かった。 じゃあさ… 1つお願いがあるんだけど…」 私は初めて口を開いた。 「何でしょうか?」 「この人は、家には俺の居場所が無い! って言ってるんだけど、この人の安らげる空間を作ってやってくれる? そしたら、帰るように言うよ」 「はい‼努力します」 「約束だよ。 もし、約束を守れなかったら… 次は・絶対に帰さないからね! いい?」 「約束します!」 私はTに向かって 「そう言う事だから… 帰りなさいよ。 子供も居る事だし、お母さんも困ってるし… ちゃんと居場所を作ってくれるって言うから…ね!」 言って、私はTの返事を聞かずに1人で部屋を出た。 犠牲が大きすぎる… そう思った。 Tにしても、重々承知の筈だった。 彼は、帰ったんだよ。 私は確かに帰した。
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