32 3回目の結婚

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諦めるって事は、何度となく経験して来たよ。 いろんな意味でね…。 だけど…慣れるって事は無い。 味方は時間だけ。 いったい、どの位かかるだろう? 次の日、久々に1人で仕事に廻って… 自分が思った以上に、深く傷ついてる事を思い知り。 落ち込んだままの心を引きづりながら 次の歯科医院に廻るために、多摩大橋にさしかかった。 河原はすすきの海。 風にうねる様は、幻想的で、ノスタルジックで、さながら海の波頭だよ。 それに見とれて… 「ここにTが居たらなぁ…」なんて、 とりとめの無い事を思いながら、対向車に目を移してビックリ‼ Tが走って来た。 まるでドラマみたい… だって居るはずがない時間に、居るはずのない場所に、Tが居た⁉ 橋の中ほどですれ違った。 私も向こうも振り返って見たけど、橋だもの・Uターンは出来ない。 5分違えば、会わないよ。 これは…運命か⁉ あの当時は携帯なんて無かったから、連絡の仕様もない。 さっきまで、忘れなきゃあいけない! そう決心して、ほんっとに落ち込んでた。 勝手なもんで、顔を見た途端に、ダメだ‼諦められない‼……そう思った。 別な意味で、仕事が手に着かなくなった。 その日の夕方Tから電話が来た。 「約束が違うよ。 そっちに帰りたい‼ 行ったらだめか⁉」 ……………しばしの沈黙……………… 「じゃあ…おいで‼だけど,来たら、もう帰さないよ‼」 「いいよ」 Tはお母さんを、神奈川の叔母さんの所に送って行った帰り道だったと、電話で言ってたよ。 多摩大橋を渡る時、同じ事を考えて居たって。 “今ここに、あなた(キミ)が居たらなぁ…。”
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