32 3回目の結婚

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夕方Tは帰って来た。 そして、夜奥さんからも電話が来た。 「Tが行ってますか⁉」 「来てるよ」 「帰るように言って下さい!」 「言わない。 私は居心地の良い空間を作ってやって下さい!って頼んだよね⁉」 「たった1日で何が出来るんですか⁉」 「出来るよ‼ 何だって‼ その気が無かっただけでしょう⁉ 帰さないよ‼ 私は一回帰したんだからね!」 「Tと代わって下さい!」 受話器をTに渡す。イヤだと首を振ったけど、口パクで「逃げないで」と言ってやった。 「もしもし…」とTが言ったとたんに… もの凄い勢いで、まくし立てる。 何を言ってるのかは分からないけど… とにかく、もの凄い‼ あれじゃあ、嫌になるわ。 Tは…ほとんど受話器を耳元から離してる。 「もしもし…」私が代わって出た。 「それのどこが、居心地の良い空間なのよ⁉」 「あんたにそんな事言われる覚えは無いわよ‼ 泥棒猫のくせに‼」 「そうだね、確かに言われても仕方ないと思うよ。 だけど、あんたはこの人をほんとに愛したって言えるの⁉ 居場所が無いと思わせるような愛し方って何なのよ⁉ 昨夜だって、2人でどこかに行くとか、やる事はいくらもあったんじゃないの⁉ 何もしてないでしょ⁉ 努力します!って言ったのに、 努力しなかったよね? 違う?」 「これからやろうと思ってたんです‼ 聞いて良いですか? 夫婦って言なんですか⁉」 「私に聞かないでよ、失敗してるんだから… ただ言える事は、自分以上に相手を思いやる気持ちじゃないの? それを忘れなければ、うまく行くんじゃないかな?」 しばらく黙った。 そして… 「良い人なんです。」と静かに言った。 「うん、知ってる」 「本当に良い人なんです」 「うん…」 「よろしくお願いしますね!」 「うん」 彼女は、諦めるんだ…
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