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~謎のおばあさん~
『薄汚れた人間と世界、命はちっぽけで無意味ねぇ。私はそうは思わない。私には命は美しく見える。確かに人は不器用で時々過ちを犯す。しかし、それでもあんたの様に支え合うこと、励まし合うことの大切さを忘れてない人がいる。誰かを笑わせたり、勇気づけたり、愛したりすることは、どんな不器用さも忘れさせるくらい素晴らしいものじゃないか。私には無意味とは思えない』
おばあさんはゆっくりと静かにそう言った。
レンズごしの優しい目がより一層優しく見えた。
『僕にはそうは思えない。結局自分の事しか考えてない。自分の利益の為に人に優しくしたり、助けたりしているに過ぎないんです。』
おばあさんはふぅと一息つくと、ゆっくりと立ち上がった。
『見せてあげよう。ついてきなさい。』
そう言うと、ビルの中へ入る扉へと歩きだした。
真也は何故かついて行きたくなった。
死ぬのは後で良いかと思い、不思議と湧き出る興味に惹かれてついて行った。
ビルを出るとおばあさんは夜の公園へと入って行った。
公園の中にはブルーシートで作られた家が立ち並んでいた。
みすぼらしい格好をした老人たちがフラフラと空き缶を集めたり、ゴミをあさっていた。
真也は戸惑った。
『ここで何が学べるんですか?』
『ここで生きている人は、周りからさげすまれ、汚がられながらも、大切な事を忘れていない。見てごらん。』
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