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お母さんの運転でついたホテルは確かにここらへんじゃちょっと名のしれた有名なところだった。
結局僕は制服から着替えていない。だってちゃんとした服装なんてこれしかもっていないんだから。
「ほらほら、アキ。わかってるわよね、お行儀よくしてね。」
車から降りるよう促しながら緊張したように喋るお母さんはいつもより化粧が濃い。
白に小さい花柄のワンピース。ほわほわの羽がついた黒いミュール。
髪なんか若いこみたいにくるくると巻いている。
ちょっと若作りじゃないかと思ったがあえて言わないでおいた。
はた目に見ても似合うんだから文句は言わないことにしたんだ。
親子(に見られているかは多少疑問だ)でホテルの開店ドアをくぐる。
涼しい風が頬をなでた。
右手に見えるレストランに新しい彼氏がいるのだと言う。
僕はガラスごしにちらりと中を見たがおじさんが二人と大学生らしい男が一人、あといかにもできそうなサラリーマンが一人、そのほかは家族かおばさまたち。
母さんの好みのタイプはいないと思うんだけど。
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