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「うわぁ。今日は念を入れて干したのに。」
鉄のため息が響く。目の前のシーツの山は、確かに悲惨だった。
白かった筈のシーツは、泥が着いて真っ黒。おまけに落ち葉と木の枝のおまけ付きだ。
これでは、ため息がでるのも仕方がない。
悠利など取り込む気すらないようだ。
その様子を見兼ねて、鉄が叫ぶ。
「ほぅら、悠利も手伝ってよ。まだこんなにあるんだからさ。」
「……はいはい。分かりましたよ。」
「はいは一回でしょ。」
「はーい。」
「返事を間延びさせるな。」
二人で無駄口を叩きながら、シーツを取り込んでいく。
(本当に、悠利は変わった。)と、鉄は思う。一年前に見せた、あの手負いの獣のような眼は最近見かけていない。
(傷が癒えた、ということかな。いや……。)自問自答を繰り返してみる。しばらく考えてみたが、答えにはたどり着かなかったようだ。
ヒュッ、と髪をかきあげ青色のリボンでひとまとめに絞る。
うん、と一人うなづいて見せ、また柔らかい春雨の元へと駆けていった。
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