3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
大通りを外れた、小路にそれはあった。
「向日葵総合病院」と描かれた看板が、その存在を大きく主張している。
赤れんが造りの建物は、どこかメトロな雰囲気を醸し出していて、通行人の目を引いていた。
一歩間違えば、喫茶店にでも成り代わってしまう、異様な外見を持つこの建物。
これこそが、悠利たちの家であり、戦場なのである。
「ただいまっす。」
ドアを突き破る勢いで、悠利が突っ込む。踏み切りは上々、といったところだ。
と、同時に。
カランコロン、ブーッブーッ、ガシャーン。ドドドドドド、ピーッ。オマエハカンゼンニホウイサレテイル、フハハハハハ……
実に多種多様な雑音、いや轟音が轟いた。
悠利と中田といえば、特別驚いている様子でもない。寧ろ呆れ返っている、という表現のほうが正しいだろう。
轟音が示し合わせたかのように、止む。
と、突然真っ暗闇の中に、影が現れたではないか。白い靄のような物体に、不安定な黒がうごめいている。先程の騒ぎの中で何者かがドライアイスに水をかけたようだ。
神々しいスポットライトに映る人影が、歩みを進めている。すらりと伸びた背筋に長い手足。モデル顔負けの抜群のプロポーションである。
「おかえり。どう?向日葵総合病院の総力を結集して作り上げた、防犯グッズは。」
最初のコメントを投稿しよう!