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悠利は相変わらず表情を変えない。どんなに非日常的な事だとしても、それが毎日目の前で起きてしまえば、日常となってしまうものだ。
悠利の紫の瞳が西京の黒い瞳を捕らえる。一瞬、視線がかちあう。紫の瞳は、やはり光を透さない。
先に西京が俯いたのを見ると、悠利は踵を返した。
この病院には、入院患者がいない。それをいいことに、医者達は入院用の個室を自分の空間に勝手に改造していた。
防犯グッズ、と称されたガラクタ達を踏まぬよう、自室へ急ぐ。僅かに空気が揺れる。西京の残念そうな溜め息が響いた。
悠利の空間へと繋がるライトブルーの扉が、埃っぽい広間の中で存在感を示している。
悠利は鈍く光るノブに手を伸ばした。
その瞬間、隣のシアンの扉が開く。
中から薄茶色の瞳がこちらを覗いていた。
「ごめんねぇ、悠ちゃん。また、やらかしちゃった。」
「……先輩、いたなら止めてくださいよ。被害に遭うの、大体俺なんすから。」
あと悠ちゃんは勘弁っす、と付け加えると彼女はからからと笑った。
反省の色は、見えない。
田所朝(たどころあさ)。この病院の紅一点であった。明るい茶髪のウェーブが笑うたびに揺れている。
日の光に包まれ、その茶色が光を放っているようにも見えた。
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