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朝は、軽く謝罪しながら微笑む。優しい、笑顔だった。それは、母が子に向けるものにも似ているように見えた。
悠利の頬にほんのり紅がさす。無表情な顔に、明るい色が乗せられた。
「ねぇ、みっちゃん。」
不意に鉄が呼ぶ。男の声だ。
「なんだ。」
「丸くなったね。」
「…あぁ。悠利も、もう子供じゃない。」
光義の切れ長の目が細まる。先程の威圧的な光は、どこにも見えない。
むしろ優しい光がさしているように見えた。
「違うよ。悠利だけじゃない。ここにいる皆が……ね?」
鉄が困ったように笑う。
その笑みの裏には、溢れんばかりの哀しみ。
綺麗だ、と光義は思う。そして彼もまた、その端正な横顔を歪めるのだった。
突然、部屋が暗くなる。春特有の春雨のようだ。
「うわ、雨じゃん。先輩、洗濯物取り込むの手伝ってくださーい。」
いかにもめんどくさいです、という声音で悠利が叫ぶ。
「はいはい。今日はこの鉄めが悠利様の為に手伝ってさしまげましょう。」
そう、威勢よく言うと、二人はバタバタと廊下をかけていった。
光義はそれを見届けると、自室に戻っていった。
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