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「…たく!埒あかねぇな!」
春人がじれて、渾身の突きを放った。
それは先程までは深く突き刺さりはした。
だが、その代償に自身のバランスを崩している。
つまりは無防備、更にダメージを多く負った銀龍は四肢を存分に奮う。
その左前脚は春人を捉えていた。
「…やべぇ!死ぬ!」
崩れた体勢で盾を構えてもさしたる効果は無いだろう。
だが、そうせざるを得ない現状。
美冬も夏美も気付いてはいるが、間に合わないし、間に合ったところで犠牲が増えるだけ。
動きたくても体は硬直していた。
しかし、銀龍の脚は春人まで届かなかった。
春人の眼前から二股に肉が別れている。
春人には血と生々しい赤い肉。自分の体の如き骨しか視界に入らない。
「…ったく…あせんなよ…」
上空には二十代前半くらいの青年が空に静止していた。
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