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「…あははは…ボク食欲ないから…ちょっとその辺り歩いてくるよ…」
夏美はそう言って、一人歩き出す。
「あんまり遠くに行くなよ~!」
秋人は呑気に背を向け、歩いている夏美に言葉を投げかけた。
春人と美冬は食材探しの準備にかかっている。
「…お前等もなかなか現金だよな…」
雪人は呟いて、一瞬にして姿を消した。
夏美は気がつくと崖の側にいた。
雑草が生い茂る中、平らな石を見つけ、そこに体育座りをしている。
「…ボク…命奪うなんて出来ないよ…」
ブチブチ雑草を引っこ抜いては崖下に投げ捨てる。
「…ボク…戦えないよ…」
夏美は更にうつむいてしまう。
何故流れ落ちるのかわからない涙。
「殺す事が怖いのか?」
背後から声をかけられ、ビクッとなる夏美だが、声の主を見て警戒を解く。
それは雪人だったからだ。
「だって…ボクが…ボクの手で…」
「甘えるのが通用する世界ではないし、現にお前は向こうの世界でも命を食している。今さっきまでブチブチ抜いてた雑草にだって、命はあったんだ。」
雪人は矢継ぎ早に言った。
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