一章

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薄暗い店内に溶け込むように、一つ影があった 東の空に白濁色の光が滲む時分 静まり返った店内には微かな衣擦れの音が小さく響いていた ふと、気配を感じて顔を上げる (  ω ) 先程まで確かに独りきりだった空間に、いつの間にやら人影が一つ増えていた (´・ω・`)「ようこそバーボンハウスへ…と言いたい所だけど、もう店じまいだよ」 しょぼくれ顔のバーテンダーはしかし、言葉とは裏腹にたった今磨き上げたばかりのグラスをカウンターに置いた トン、と小気味良い音につられるように、突然の来訪者は僅かに顔を上げる気配を見せた (´・ω・`)「このバーボンはサービスだ」 バーテンダーの長く節の少ない指がバーボンの瓶を傾ける とくとくとグラスに注がれるバーボンを見ているのかいないのか、 薄暗い闇に隠れ、来訪者の表情を窺い知る事は出来ない (´・ω・`)「立ち話…といっても僕が一方的に話し掛けてるだけだけど、まぁ座りなよ」 バーボンで満たされたグラスの隣に瓶を添えるように置くと、バーテンダーは再びどこからともなくグラスを取り出し、磨き始める 来訪者は音も無くカウンター席に滑り込み、無言でバーボンに口をつけ、客になる
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