3/7
前へ
/12ページ
次へ
  ──────── 「…ピアノ、お上手ですね。けど、」 放課後、音楽室から聞こえる柔らかくて優しい音。 入学してから毎日聞いていた。 でも今日は柔らかくて優しいいつもの音とは違っていて 「…あんた誰。」 「あ、1-Bの山下雫です。」 うつむいた顔をあげることなく 私に問い掛ける。 顔が見てみたい 長い前髪が邪魔をする うつむいた顔を上げてほしい 「…で?あんた何?」 「あ…いつも教室でピアノ聞いてたんですけど…なんだかいつもと音が違う気がして。」 ぴくっと肩が動く 長い前髪が揺れる けど顔は上がらない 「…あの。」 「寄るなっ!!」 少しずつ近づいたら怒鳴られた。 「俺はお前なんか知らない。近付くなよ。誰とも関わりたくねぇんだ。」 少しあがった顔に、 私の見間違いでなければ… 「…泣いて…る?」 「…っ!!」 顔を上げて勢いよく私をにらみつける彼は 確かに泣いていた。    
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加