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「…んだよ…見んな。」
「あ、ごめんなさい。…けど…」
「俺が泣いたらだめなのかよ。」
「いや、そうじゃなくて…何があったんですか。」
「は?なんで初対面のお前にんなこと話さなきゃいけねぇんだよ。」
彼の言うことはもっともで
私は彼に何があったかはおろか、
彼の名前すら知らない。
けれど気になって仕方がない。
涙のわけを
奏でる音の違いを
彼のすべてが気になるのだから
「気になるんです!!」
「はぁ?!」
「気になって、気になって仕方がないんです!!」
その頃には彼の涙も止まっていて
眉間に皺を寄せて私を見ているだけだった。
ピアノを片付けながら
私を無視し続ける彼を
目を離さず見ていた。
「…早く帰れよ。鍵、締めんだから。」
そう言って私をドアの外へ押し出した後
鍵を締めた彼の後ろ姿に声をかけた。
「っ私!!明日も来ます!!明後日も、その次の日も!!」
一瞬立ち止まった彼は
何も言わずに立ち去った。
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