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蝉時雨を潜り抜けてワイシャツを汗でビッショリにしながら、ガラガラの駐輪場に自転車をとめた。
お盆の盛りは午前中だというのにとんでもない暑さだ。雲なんて無粋なものなど紺碧の空にあるはずもなく、ギラギラの太陽がアスファルトを容赦なく熱し続ける。
山本 友顕(ヤマモト トモアキ)はワイシャツの袖で汗を拭いながら、事の理不尽さにため息をついた。
『明日の9時半に学校の生徒会室に集合だ!』
昨夜の会長の声がまだ耳に残っている。姉御肌を通り越して、人類の創造力の範疇を超えることを思い付く人なのだ。今日は一体何が待っているのだろうか。
山本が重い気分で自転車にチェーンをかけていると、
「あ、山本君……」
山本とさして変わらない表情の木村 舞子(キムラ マイコ)が、自転車でやってきた。
「木村さん、おはよう」
「おはよう」
木村が山本の隣りに自転車をとめる。ふたりは顔を見合わせると同時にため息をついた。
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