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 陰鬱たる澱みがプレハブ屋根の駐輪場に漂う。  昨日の今日なのだ。恐らく木村だって会長から昨夜突然連絡をうけて憂鬱な気持ちで夜を過ごしたに決まっている。 「なんだろうね、今日は……」 「ホント、突然だよね……」  交互にため息をつきながら、野球部が汗を流すグラウンドの横を通り抜けて昇降口に向かう。  どうか楽で早く済む用事であることを願う。ちなみに夏休みに入ってからの会長の用事での最短記録は、「地球温暖化防止のためにかき氷を作るぞ!」の1時間8分で、最長記録は、「真夏の読書大会・太宰 治 編!」の6時間41分だ。  しかし、何度会長の思い付きに振り回されても、役員全員が律義に集合を守ってしまうのだ。会長の姉御肌のなせる業か、単に四季高校生徒会執行部の面々がお人好しなのか。  どうか簡単な用事でありますように。  山本と木村はそう願いながら人気のない校舎を生徒会室向けて歩いていく。
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