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「えぇ?」 『大丈夫、さしたる量じゃない。二人で力を合わせればすぐに終わるさ』 「嫌ですよ僕たちだけ頑張るなんておかしいですよ」 『頼む! どうしても今日中に仕上げなくちゃならない仕事なんだ。埋合わせは必ずする』  会長に何かを頼まれるなんて山本にとって初めてだった。 「……ちょっと待ってください」  山本は携帯に手をあて、 「木村さん、今日僕たちだけで仕事仕上げてほしいって……」 「え? 他の先輩たちは?」 「……ブロッコリー症候群」 「!?」 「……僕もよくわからないけど」 「……な、なんだろそれ……まぁ仕事をすることは別に構わないけど……」  木村は微妙な表情で頷いた。 「……わかった。…………会長」 『おう、話はついたか』 「……わかりました、今日は僕たち二人で仕事やっちゃいます」 『ありがとう。恩に着る』 「絶対埋合わせしてくださいよ絶対ですからね」 『おぅ任せとけ。鍵はドアの横の目安箱の下だ。じゃあ私も忙しいのでもう切るぞ。では健闘をいの、』  突然だった。全く予想だにしない言葉が、携帯の奥から山本の耳たを打った。 『苺パフェご注文のお客様ー』『わっ今は駄目ですって!』『会長携帯切って!』『今の聞こえたかな!?』  携帯の向こうでドタバタ音。慌てた幾つかの声音は明らかに聞き覚えのあるものだった。 「……会長」 『何だ?』  しかし、会長の声は澱みのかけらもなく毅然としている。山本はひとつ息を吸って、 「今、先輩たちファミレスに、」 『さらばだ』  一方的に通話は切れた。
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