その理由。1-2

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「・・・そんな事が・・・」 「・・・」 何が哀しくて こんな話をしちまったんだろうか。 ・・・違う オレはただ・・・知って欲しかった。 お前に、過去を。 芸術を、性格を、 ――その理由を・・・。 「わッ・・・笑いたきゃ笑え!  ガラにもねぇ、オレのこんな話・・・ッ!」 急に羞恥心が湧き上がり オレは必死に隠し顔を背けた。 コイツの事だ こんなオレをバカにするだろう 「そっか、だから永久に固執してんだな・・うん」 「・・・ッ?」 「だから、ありえねー程  せっかちなんだな・・・旦那」 考えても無かった返答。 オレをバカにし笑うどころか、 その大きな手で頭を優しく撫でてきた。 何故か抗う事は出来ず 素直に受け入れる。 「オイラは、何処にも行かないぜ?」 「・・・?」 「アンタを独りにゃさせねーよ・・・うん。  だから安心しろ、な?」 何よりも優しいその言葉。 あぁ・・・ オレは・・・・ お前が居ねぇとダメになっちまうようで・・・。 怖ェ・・・。 知らない間にオレは泣いていた。 嬉しくて、 それがまた怖くて。 零れる雫をそっと唇で掬い上げるソイツの行動が恥ずかしく コツンと一発、その頭を殴ってやった。 その理由。-終-
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