月光戦記

プロローグ

　その利点は、何と言っても五肢を駆使する事によって可能になる優れた運動性能、そして生身の歩兵並の柔軟な戦術を使いこなせる点に集約される。
　艦艇よりも小回りの利く兵器など航宙戦闘機程度しか持たない地球軍はこの巨人兵器の前に為す術もなく、苦戦を余儀なくされた。
　しかし地球軍だってそう容易く自分たちの故郷を侵略者に明け渡すつもりはない。
　「おそらく、この戦闘で全てが決まる。ここで負ければ地球は彼等に蹂躙されてしまう事だろう。我々はここで退く訳にはいかない。全軍、善戦を祈る！！」
　地球軍旗艦ジークフリート艦長のセイバー･クラウドは、その鋭利で精悍な眼に力を込めて全軍に必勝を訴えかける。
　彼は地球側の多くの兵士から信任の厚い優秀な将官であり、五十を越える年齢によって刻まれた経験と共に幾多の戦場を駆け抜けた猛将である。
　その揺るぎない信念と自己確信性の強いリーダーシップで、高いカリスマ性をもつ。
　その行動力の裏に「盲目的」という言葉をはらみながら。