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すると真っ暗なコクピットのモニターとインジケーター類が一つ一つ点灯して機体に異常が無いことを示すシグナルが全てグリーンに輝いた。
マコトはゆっくりと顔を上げ、台座ごとカタパルトに向かう機体の中で一度大きな深呼吸をした。
その機体のシルエットは戦闘機のそれとは明らかに違っていた。
出撃準備で忙しないマコトのコクピットに通信が入る。
銀色のカールがかった長い髪と同じ色の瞳を揺らして、マコトのガールフレンド、エリー・フェンネルが哀願する。
「帰ってきてね、マコト……絶対に、だよ!」
マコトはやつれた顔で、けれど笑顔を返した。
「大丈夫、僕はエリーの所に戻ってくるよ。約束する」
カタパルトに機体が固定される振動でマコトはカウントダウンの開始を知った。
ケビンはやれやれと呆れた目でエリーとモニターのマコトとを見た。
「まったくお熱い事で。見ちゃいられんぜ。ま、とっとと片付けて戻って来いよな、マコト!」
ケビンがエールを送ると、カウントダウンのシグナルサインがレッドからグリーンに変わった。
照れ笑いするマコトは、指を立ててケビンに返した。
敢えて真ん中の指を。
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