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プロローグ
新制暦100年。
国家間の戦争と言う概念が消失してから100週年の記念の年。
国、という言葉自体が市町村的な自治体としての意味合いを持つようになった時代。
世界は国家連合という一つの国としてまとまっていた。
もちろん、いさかいや争いはあったが、国家間の戦争のような大規模な戦闘は起こらなかったし、理屈の上では宣戦布告がなされない限りは戦争ではない。
いつの間にか起こっているような小規模な内戦は戦争とは呼ばないからだ。
万が一、戦闘が起こった地域にはすぐに国家連合軍が介入して無差別爆撃を行った。
喧嘩両成敗の理屈で、仕掛けた側も、仕掛けられた側も、民間人も諸共にである。
その行為は世界中にテレビ中継された。
見せしめの為に。
初めの頃は世論の反感も大きかったが、強大な力の前にやがて抵抗勢力の勢いも衰えていった。
そして百年。
ようやくにして築き上げた秩序が揺るがされかねない事態が起こる。
宇宙からの訪問者。
アルガと呼ばれる巨大な船団が、地球を包囲したのである。
彼等は母星を失い、新たな住処を求めて何代にも続く永い旅路の末に地球という水の惑星へと辿り付いたのだ。
しかし、彼等には決して侵略の意図は無く、地球に対して、僅かな土地でも分けて貰えれば十分だから自分たちを受け入れてもらいたいとの電文を送った。
だが、ここで大きな障害にぶつかる事になる。
言葉の壁である。
アルガ側からすれば、へりくだり、下手に出た態度であっても、地球側からすれば、自分たちを包囲した謎の巨大船団がその軍事力を突きつけて植民地化を要求しているように見える。
膠着した状況が数週間続いた後、一発のレールガンの砲弾がアルガ側特使の艦を射抜いた。
アルガの電文が解読できたのも同時期だったというのは皮肉な話だ。
レールガンは隕石破壊用の物だが、その威力はデブリの直撃にすら耐える宇宙艦艇を破壊するのに十分な破壊力があった。
今となっては、それが事故だったのか、それとも意図的なものであったのかを確かめる術はない。
だが、先端を開くには十分すぎる程の威力があった事だけは確かだった。
アルガはこれを地球からの宣戦布告とし、地球への侵攻を開始したのである。
聖戦の名を冠して。
そして地球とアルガとの戦争は激化し、泥沼化してゆく。
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