― 予感 ―

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「神原(カンバラ)冬弥、本社システム管理課勤務を命ずる」 社長から辞令を受け取る。 「渡瀬(ワタセ)莉羅、本社秘書課勤務を命ずる」 社長は顔を上げ、莉羅を見て視線が止まる。 「大丈夫ですか?」 列席者もザワつく。 莉羅は表情を変えず、 「大丈夫です」 辞令を受け取り、一礼すると席に戻る。 「三浦和喜(カズキ)、本社営業部勤務を命ずる」 「石川詩織(シオリ)、本社営業部勤務を命ずる」 ―入社式。 「莉羅ちゃ~ん!」 式が終了した途端に詩織がやってくる。 「それ、どうしちゃったの?大丈夫?」 心配そうに莉羅の顔を覗き込む。 その様子に莉羅は苦笑し、 「大丈夫だよ。ちょっとぶつけただけだから」 「だって、莉羅ちゃんのキレイな顔が…」 「ホントに大したことないから」 そういう莉羅の顔は、右目には眼帯、そして分厚いレンズの黒渕眼鏡。 実際、ゴミを拾う時に棚の角にぶつけ、切ってしまった。 腫れていて、もちろんコンタクトも入らない。 片目だけ、とも思ったが面倒になりやめた。 「意外におっちょこちょいなんだから」 そう言うと詩織は苦笑した。
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