907人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
「神原(カンバラ)冬弥、本社システム管理課勤務を命ずる」
社長から辞令を受け取る。
「渡瀬(ワタセ)莉羅、本社秘書課勤務を命ずる」
社長は顔を上げ、莉羅を見て視線が止まる。
「大丈夫ですか?」
列席者もザワつく。
莉羅は表情を変えず、
「大丈夫です」
辞令を受け取り、一礼すると席に戻る。
「三浦和喜(カズキ)、本社営業部勤務を命ずる」
「石川詩織(シオリ)、本社営業部勤務を命ずる」
―入社式。
「莉羅ちゃ~ん!」
式が終了した途端に詩織がやってくる。
「それ、どうしちゃったの?大丈夫?」
心配そうに莉羅の顔を覗き込む。
その様子に莉羅は苦笑し、
「大丈夫だよ。ちょっとぶつけただけだから」
「だって、莉羅ちゃんのキレイな顔が…」
「ホントに大したことないから」
そういう莉羅の顔は、右目には眼帯、そして分厚いレンズの黒渕眼鏡。
実際、ゴミを拾う時に棚の角にぶつけ、切ってしまった。
腫れていて、もちろんコンタクトも入らない。
片目だけ、とも思ったが面倒になりやめた。
「意外におっちょこちょいなんだから」
そう言うと詩織は苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!