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川の流れのように少しだけ不揃いな煉瓦が模様を描く道路を、コツコツと足を鳴らしながら私は歩く。
ブロック造りの階段を上り下りしながら、町の作りを確かめるようにして私は町をぐるりと廻った。素敵な何かに出会えるような、漠然とした期待と小さな不安を胸に秘しながら。
そんな折り、ふと目についたガラス張りの店舗を覗けば、木目が際立つ静かな雰囲気のカウンターに、白いウサギの人形が腰掛けていた。
興味を引かれて入り口を確認すると、どうやらここはカフェらしい。見たところ、お店としては小さいほうだったけれど、おいしいコーヒーを出してくれそうだと、そう感じさせる場所だった。
よく確認してみると、どうやらお店は開いているらしい。私は期待に胸を膨らませながら扉を開けた。
お店の中は思ったよりもずっと奥行があり、20メートルくらいむこうには階段が見えた。
カウンターを確認すると、不思議なことに先程の人形が見当たらない。
おや? と思って店員を探したけれど、影も形もありはしない。ただただコジャレたカフェ店舗がそこにあるだけだった。
私は、ここに来てようやく違和感を覚えた。正直に言えば違和感を一切感じなかったわけではない。ただ、気付いてしまえば何かが起こりそうに感じて、半ば意図的に無視し続けていたのだから。
そして私は思い知る。
この町の恐ろしさを。
今まで誰にも会わなかったことを。
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