ドールハウスへようこそ

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「ねぇ、って言われても、私、〝タダで見せる〟なんて言ってませんから」 来夢は、瑠璃が選んだドールハウスの小さな扉をそっと閉める。 その口元は歪んでいた。 「勇樹さん、アナタの望みは叶えて差し上げました。その報酬は、きちんといただかなくちゃ……ねぇ? 私も雇われの身ですし、望みを叶えるのだってタダじゃないんですよ? ンフフフッ♪」 気分よさげに呟くと、ドールハウスを持ち上げて、再び元あった場所に置いた。 「それにしても、人間って本当にどうしょうもなくて、バカな生き物なんですね? 瑠璃さん?」 呼ばれてピクリと身を起こす瑠璃。 濡れた鼻をヒクヒクとさせながら、まるでたんぽぽの綿毛のような、ふわりとした毛を足先で掻き毟る。 「フフフッ、そうでしたね。もう、瑠璃さんは人間ではないんですもんね。ごめんなさい、私の独り言です」 そう言う来夢は目を細めて微笑む。 その時、背後の扉からコンコンとノックする音が部屋に響く。 「あら、もう次のお客様かしら?」 来夢は再び口を歪めて眉間にシワを寄せた。 「努力もせず、ただ願い祈るだけの、欲の深い人間ばかり……」 小さく呟く来夢は身だしなみを軽く整え、ドアノブをひねる。 トタンっと音をたてて瑠璃が来夢の足元に座る。 真っ白な光が部屋に差し込むと、満面の笑みで来夢は口を開いた。 「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。私は来夢、アナタの望む夢を見せて差し上げます」 END
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