生者を地獄へ招く腕【前編】

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「でもこの絵が地獄へ引きずりこむとしたらこの腕が飛び出してくるわけじゃないですか。それってすごいじゃないですか!」  赤城はため息をついた。 「だからそれはまだ分かんねぇんだよ」 「じゃあこの絵を見て行方不明になった人はどうなったんですか?」 「それもまだ分からねぇ。もしかしたら美咲さんの心配しているように、噂通りにこの絵に引きずりこまれてしまったのかもしれない。でも霞さんの言うようにたまたまの偶然かもしれない。それをまだ見極められないから、これからも捜査が必要なんだよ」  赤城の言葉に真山の表情が輝いた。 「ってことはしばらくここにいるってことですね!?」 「は……?」 「"城に泊まりこんで得体の知れない絵を調査"……くぅーっ!」  真山の勝手な想像に赤城は呆気に取られていた。 「あ、すでに日も傾いてきましたし、よろしければお泊まりになっていただいても構いませんよ。こういう作りの家だから部屋はたくさんあるんです」 「えっ!? いやしかし……」  赤城が戸惑う横で貝塚が右腕に巻いた腕時計を見ていた。 「18時ちょい前か……。まぁ、せっかくだからお邪魔させてもらおうかな」 「俺たちもいいかな?」  錦川と金剛寺が篠山邸での宿泊に立候補していた。 「もうちょっと早く引き上げるつもりだったんですが、噂の絵を見れると知って帰るタイミングを無くしてしまって……」  貝塚や錦川、金剛寺の宿泊にも美咲は快諾した。
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