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それは、この部屋にいる誰もが抱えている不安。
この短時間で4人がどれだけ無力か、無知か、見せつけられたばかりだ。
それも仕方はないのだが。
「正直、不安だよ。情けないけど」
「いや、そんなことはねぇよ。当たり前だ、不安になるのは」
肩を落とす光の背中を竜牙がどんとたたく。
「俺達はまだまだ弱い。クロドファミリーの人達みたいな強さも冷静さも知識もない。経験もない。
でも」
視線をさまよわせる3人に竜牙は自信満々のいつものような強い表情を向けた。
「俺達は自分達が弱いから不安なんじゃない。悠希を守れるかどうか分からないから不安なんだろ?自分じゃない、悠希のことを思えてる。それだけで今は十分だろうが」
竜牙の言葉に3人ははっと顔を上げる。
「それにな。悠希は俺達より強い。自分の身くらい自分で守る。俺達が救うのは悠希の身じゃなくて“心”だ。ゼロさんやドクターが言ってたのはそういうことだろ。
その悠希を救う俺達が不安になって気を滅入らせて、そんなんで悠希が元気になるわけねぇだろ!」
な!と笑う竜牙を見つめて3人はしばし固まっていたが、すぐにつられるように笑いだして各々首を縦に振った。
そうだ。あの人達は自分達が弱いことを理解しているんだ。
だから、悠希を無傷で助けるなんてことは想わなくていい。
自分達にできることは限られているけれど、それは他の誰にもできないこと。
それなら、やることなど決まっている。
それを、貫き通せばいいだけ。
己のすべきことを明確に見いだせた4人は強い眼差しのまま微笑む。
貫き通せばいいと、それなら簡単だと。
心に決めたことを貫き通すことが何より難しいことを4人は分かっていない。
心のうちにある不安はまだ消えはしないが、4人はちゃんと自分達の答えを見いだせたようで、その表情は晴れ晴れとしていた。
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