11881人が本棚に入れています
本棚に追加
/481ページ
***
悠希は双子がいなくなった部屋で一人深くため息をついた。
痛む体を寝かしたまま、先ほどまで縋るように掴まれていた両手に視線だけを向ける。
あの子達が、泣いていた。
傷だらけの手に縋って、決して他人には見せない表情で、切羽詰まった声で。
お互いと、自分以外には見せない涙を。
あの子達は言っていた。
敵に捕らわれ、自分を見失い、薔薇姫として敵を全滅させた自分を見つけた時。
薔薇姫が悠希に戻った時。
どうして、銃を向けたのかと。
どうして、殺さなかったのかと。
そう問うたら。
辛そうに、涙を流しながら。
自分達のあずかり知らぬ場所で悠希が死ぬくらいなら。
薔薇姫のように守りきれないくらいならと、悠希に銃を向けたけれど。
―――撃てなかったよ
「撃てなかったよ、悠希」
「撃てなかったんだ」
「悠希とまだ一緒にいたかった」
「また一緒にお仕事したかったんだ」
「「まだ、一緒に生きていたかった」」
それにね、と双子は泣き顔で無邪気に笑った。
「まだ、その時じゃないから」
「まだ、殺す時じゃない」
「あぁでも」
「いつかまた薔薇姫みたく悠希が死ぬようなことがあった時は」
「ちゃんと僕達が悠希を殺してあげるよ」
「苦しまないように」
「三人で一緒に」
「「絶対に、一人ぼっちにはさせないからね」」
本当に嬉しそうにそう笑った双子は、本当に怖かった。
あの二人が、本当に犯人なのだろうか。
でも、自分と同じくらい狂っている二人なら。
いやだめだ。妙な思い込みは情報を正しく読み取れなくなる。
落ち着け、周りを見ろ、よく考えろ。
そもそも、双子が犯人ならボスが気付かないはずがない。
,
最初のコメントを投稿しよう!