突然の下命

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  「旦那、だんな!ありがとー!」 「わ、分かったから放さぬか、こら!」 正面から飛びついた彼は、背後に回って一向に俺から離れようとしない。それどころか俺が動く度に嬉々として囃(ハヤ)し立てるばかり。 困ったものだと苦笑を浮かべると、ふと襖の向こう側が陰った。 「幸村様、支度が整いましてございます」 才蔵の声だった。 ああと俺が返事をするより先に、佐助がタッと駆けて行ってしまう。待てと手を伸ばした時には遅かった。 「よくやったな才蔵、ご苦労さん!」 「は‥?」 やってしまった‥‥ 俺は伸ばしかけていた手を額にやり、盛大な溜め息をついた。  
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