猛煉の湊 第一章

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猛煉の湊 第一章

 「我、砂塵の彼方殿に義ありて、この場助太刀せん!」その声の主が誰なのかはすでに彼方には分かっていた。だが、それが事実であるとは認識するのは難しい事だった。  「何で・・・お前が・・・」彼方の言葉は疑問形だった。当たり前である。あれほどの激闘を繰り広げた相手が今は自分の為にと我が身を賭して自分を護ろうとしているのだから・・・  「言っているであろう?義ありて、助太刀すると」声の主は湊・・・猛煉湊(もうれんみなと)のものである。  「無理だ・・・いくらお前だと言えどこの軍勢相手にたった一人で勝てるわけが無い。今ならまだ間に合う。お前だけでも逃げろ」彼方はすでに自分がこの場から生還する事を不可能であると決め付けている口調であった。  「は・・笑わせてくれる。それが、吾と命を賭けて死闘をした者の吐く台詞とは思えん。それに、知っているであろうが?吾の能力を・・・」湊は駆け出した。その一万もの軍勢の中に・・・たった一人で・・・  あの時、初めての敗北というものを知った。吾の力に勝てる者などはいないというのが決まりだった。だからこそ、最強・最悪の騎士だった。あの日、奴が現れて、吾を倒すまでは・・・だからこそ、吾は思う。もう一度奴と戦いたいと・・・
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