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だが女相手でも今の俺はルールを守る自信がなく、手を離せない。
「あいつを何処に拉致りやがった……!」
「ぐ、ぐるじいぃ~! こ、こっちの話も聞いで~!」
「……チッ」
このままではまともな会話にならねぇから、俺は震える手を僅かに残った理性で抑えつける。俺から解放された満川は、ゲホゲホと噎せながら酸素を肺の中へ送り込むことに必死になっている。
何の騒ぎかと徐々に人が集まってきやがる。すっこんでろと目で威圧すると、連中は顔を背けるも新たな野次馬が後を絶たない。校内で女に手を上げて涙目にさせてる野郎がいたらどう考えてもそいつが悪く見える。しのちゃんにそんなことしてる奴がいたら俺は殺しに行くしな。
「て、手が早いとは聞いてたけどここまでとは驚きだねっ! 後でちゃんとメモっておくとして──場所を変えない?」
「……ああ。だが逃がさねぇぞ」
「いや逃げないよ。何も悪いことしてないからね」
「っと、その前に制服に着替えてくる」
「逃げないように一緒についていこうか?」
「俺のだるんだるんのわがままボディーが見たければ好きにしろ。俺は着痩せするタイプだからな」
「君の見た目でそれは着痩せじゃなくて最早変身だよっ!」
☆ ☆ ☆
本来こんなことをしている場合じゃないのは分かってるが、無策で行くと返り討ちに遭いかねない。俺は満川を連れたまま教室で超速早着替えをする。当然他にもクラスの連中はいたので、突然俺が先輩を連れて来た上にストリップショーを始めた俺に困惑していた。まぁ本命はスマホなんだがな。そして今度は中庭のベンチに向かった。此処は以前クリスと来たな。今は遠い思い出だ。
「──で、何故お前がマリアの現状を知っている? 返答次第じゃ容赦しねぇぞ」
「君は怒ると口調が変わるタイプなんだねっ。うーん……一言で言うと、勢力図は一辺倒じゃないってことかな」
「じゃあお前は銀髪じゃなくて違う婚約者候補の手先か」
「正確には情報屋だね」
コイツ……この何でもありの争いで武器商人みてぇな真似してやがんのか。いつか殺されんぞ。
となると情報は金になる。ニコニコと笑顔を浮かべているが、内心はこちらを値踏みしているのかも知れない。勿論この言葉が嘘で俺が満川を信用して迂闊なことを喋ってそれが他の奴らに伝わることだって十分に考えられる。
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