祐芽という女、祐樹という男

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 先程から指先でユメにメッセージを送っているが返信はなく、既読も付かない。情報端末が取り上げられているか、そんなものに気を回す余裕すらない状況なのか。いずれにせよ一刻も早く助けに行かねえとまずい。  その為にはコイツが握ってる値千金の情報をさっさと聞き出すしかない。 「そっちの事情は分かった。で、マリアは何処にいる?」 「その前に私に言うことあるんじゃないのかな?」 「ない。その情報が正しかったと証明されて初めてお前が敵対勢力じゃないと判断できるからな。謝るのはその後だ」 「怒ると頭の回転も早くなるんだね。まぁいいよ、謝ってもらっても1円の得にもならないし。じゃ今回はサービスするから前金で100でいいよ」 「……一応確認するが100円じゃねぇよな?」 「マリアちゃんの命の値段が100円だと思う?」  満川のうざったいハイテンションな口調は鳴りを潜め、質問に質問で返して来やがった。此処で『払う、払います! 一生かけてでも!』と言えば『その言葉が聞きたかった!』みたいな展開にならねぇかな。  ならないな。 「情報が正しかったら150払うから後払いにしてくれ」 「え~、ダメダメ。これから君が死んだら取りっぱぐれるよ」  つまりユメは現在殺しもする連中に追いかけられてるってことか。そして中々強いと。情報屋にしては口が軽いな。…………まぁそんなことはわかっていたが。  払えるもんなら払いたいが、生憎祖父ちゃんが言う『仕事』もやってないし、所持金で100万も持ってるはずがない。  瞬間、我ながら最悪のクズ思考が脳裏をよぎる。 「俺のパトロンにツケとくのは?」 「友達? 本人の了解がないとダメだね。後で面倒な揉め事は困るよっ」 「待ってろ」  素早く連絡帳からクロードを探し出す。まぁ普段散々たかってるし、今回は額が額だ。どうせ無理だろう。順当に考えてもっかい説得した後、本気で脅迫するしかないな。  意外なことに奴はワンコールで応答した。 『祐樹か?』 「あぁ。開口一番悪りぃんだが頼みがある」 『頼み?』 「後でイロつけて返すから100万貸してくれ」 『──何に、いや誰に払うんだ?』  お? 何だ、即通話切られると思ったが……。 「満川月夜っつー悪徳情報屋だ」 『代われ』 「あん?」 『君は交渉が下手だからな。こういうのは得意な人間に任せろ』  ヤダ……カッコいい……。
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