祐芽という女、祐樹という男

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「俺のことってちんこのデカさか? 引くわ」 『すぐ下ネタの発想に持っていくのをやめたまえ! ──っと、君はこんな無駄話をしている場合じゃないだろ? 何のために代わったと思っているんだ』 「……そうだな。ありがとよ」 『礼なんかいいさ。もう一度代わってくれ』  イケメンか?  俺のスマホを満川に渡す。満川は嫌そうな顔で受け取り耳に当てた。今度はスピーカーにしといたから会話の内容的にも描写的にも問題ナッシングや。 「……まだ何か?」 『大有りだ。位置データを先程言った僕の端末に送れ』 「はいはい」  満川は肩と耳でスマホを挟みながら、自分のモノを取り出しシュバババと指を動かして何やら操作している。フリック入力覚えると便利だよな。慣れるまでは天の誰かさんも画面破壊したくなったらしいけど。  ティロリン♪と小気味よい音が鳴った。 『よし。データは確認した』 「じゃあこれで……」 『待て。ハンズフリー対応のBluetoothイヤホンはあるか?』 「そりゃ仕事柄持ってるよ」 『その男に貸してくれ』 「嫌だね」 『そうか……君はまだ若いのに残念だ』 「く、くぅ~! わ、わかったよ!」  満川は悔しそうに地団駄を踏みながら、俺にブルーなんとかのイヤホンを渡してきた。オーヲタじゃねぇからよく分からんが、イヤホンだっつーなら耳に入れるもんだろう。他人のイヤホンだと耳垢が湿ってたりすると嫌だったが、ほぼ新品同様に綺麗にしているようだ。  当然何も聞こえてこないが、指示された満川が俺のスマホを弄るとクロレッツのねっとりした声が聴こえてきた。 『誰が石破茂だ!』 「具体名出すんじゃねぇよ、消されたらどうする」 『今さらそれを気にするのか!?』  だって政治家だと蓮4みたいなやつが漫画にクレームつけたりするやん。  ぐぬぬ顔で悔しそうにしている満川。下手に敵に回しても面倒だな。飴と鞭が必要なんだこういうのは。 「まぁそう悔しそうにすんなよ。クロードのやつが今後はお得意さんにしてやるってよ」 「ふーん……そういうことなら今日はおとなしく引き下がるよっ。じゃあまたご贔屓に~♪」  機嫌を良くした満川はスタコラサッサと何処かへ走っていった。 『おい祐樹!? 何を勝手な──』 「早くしようぜ。事は一刻を争う」 『カッコつけても君が無駄に数ページもダラダラやっていた事は忘れないぞ』
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