祐芽という女、祐樹という男

7/22
前へ
/1023ページ
次へ
 全てにおいてグダグダなのは長期連載にありがちだから仕方ない。許せサスケ。 「で、お前がナビしてくれるっつーことでいいのか?」 『ああ。僕以外に適任がいないからな』 「よし。でも野郎の声が常に耳から聴こえてくるのは悪夢だから女子アナの声に変えてくれ」 『無茶言うな! それとイヤホンを指で叩くな。ノイズが入る』  注文が多いやつだ。  俺は周囲を見渡し、こちらを監視している人間がいないことを確認してから、下駄箱へ向かう。  移動している最中に状況説明しておくか。満川と交渉してる時点である程度は把握していると思うが、念のためだ。 「現状確認すっと、マリアが拉致られてる上にやられる可能性アリ、俺は救出に行く、クロードは案内役だ。俺の武器は無し、敵戦力は不明だが指揮統率の取れた実行部隊複数名で武器所有は不明、許婚候補からは俺はもう降りた。後走ってると頭回んねぇから、お前が聞きたいこと言え」 『君の頭にしては上出来だ。──分からないなら答えなくていいが、何故彼女なのかは分かるか?』 「恐らくマリアが俺の女だからだ。他には?」 『……は? はぁぁぁぁ?』 「他には」 『き、貴様はクリスがいるというのになんて贅沢……じゃなく羨ましい真似うぉぉぉ……』 「言い換えても意味同じだぞ」 『ハッ、まさかここに来てジル何某が動き出した理由は』 「てへっ」 『てへじゃない! ……クリスにバレたのか?』 「イチャついてたのがバレただけだ。その先はまだ姉貴と祖父ちゃん、後はお前しかこの世で知らん」 『頭が痛くなってきたよ……』  廊下を駆け出し、何人かの生徒の間をすり抜け下駄箱に辿り着いた。靴に画鋲とかネズミの死骸は入っていない。そこまで陰湿ないじめは流石にないか。念の為ラブレターを探してみるが、シャイな女どもはそんな勇気はないようだ。  素早く外履きに履き替え、再び駆け出す。 『今余計なことをしていなかったか?』 「別に。他にはないのか?」 『……救出作戦で人手が皆無というのは余りにも無謀な話だ。腕が立つ人間がせめて後一人、いや三人は欲しい』 「そりゃ無理な話だ。分かってんだろ」  もう小雪も彩も助けちゃくれないし、クリス関係の奴は誰も動かないだろう。マリアも『元』がついちまった以上、同僚だからって来る奴もいない。会長も巻き込めない。……考えたら戦力女ばっかやん。
/1023ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11036人が本棚に入れています
本棚に追加