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祖父ちゃん……は駄目だな。それも修行の内とか言いそうだし。下手に刺激するより勝手に助けてくれる方が期待度高いレベル。
『言いたくないが──』
「なら言うな」
『……なら遺言を聞いておこうか』
「くだらねえこと言ってんじゃねえよ。そろそろ校門出るぞ」
朝ならともかく昼休みの時間帯では人もいないため誰にも遭遇することなく外へ出られた。
『よし、始めるぞ』
「おう」
『まずは右に500メートル進め。その後左折しろ』
「そういや電話代ってどうなってんの」
『今更だな!?』
色んな手続きとかはまだやってないけど俺が料金払うんだから一応気にしておく必要はあるはずだ。ただ間違いなく今やるべきことじゃないので、カーナビと化したクロマグロの指示で走ることにした。
☆ ☆ ☆
「よっと。次は?」
『直進750メートルして、右折だ』
「はいよ」
『……改めて思い知ったが君の身体能力は化け物だな』
「お世辞言ってもうまい棒しかやらねぇぞ」
昼時とはいえ、不気味なほど人が居ない住宅街を抜けていく。そろそろ汗が額に滲み出してきたので、手の甲で拭う。
『これだけ走り続けて息を切らしてない上、速度が落ちるどころか上がっている』
「なんだ、そんなことか。運動部なら誰でもそうだっつーの」
『君は帰宅部だろうが! 大体常人はショートカットとして橋を飛び越えたりしない!』
「あんな短い橋で褒めすぎだ」
さっき飛んだところか。7メートルくらい全身使えば余裕だろ。陸上選手みたいに足で着地しなくてもいいんだからよ。高校記録が8メートル弱とはいえ。
『7メートル跳んで腕だけで塀を掴んでよじ登る奴がそうそう居てたまるか! 普通その後もすぐ走り出せるか!』
「漫画の世界にはよくいるだろ」
曲がり角が近づく。おっと、右折だったな。
カーブミラーを見て車が来ないことを確認して、俺はスピードを落とさず曲がり切る。すると見覚えのある光景が。
「チッ、世の中ゲーセン好きが多いな」
『到着だ。ん? ゲーセン?』
「このビルの地下には悪い奴らがたむろしてるゲーセンがあんだよ」
『廃墟ビルじゃなかったのか。周囲に人影はあるか?』
「待ってろ」
俺たちの目的地はいつか歩が拉致られてたゲーセンだった。まぁ人目につかず、地図にもないはずの場所だしな。監禁は楽だ。
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