祐芽という女、祐樹という男

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 黒服の彼らは流石に精鋭で構成されてるようで、私がモゾモゾと動く度に指がピクリと反応しています。これでは拘束されたまま戦闘開始するのは勝算が少ないですね。暇なので少しお喋りして時間を潰すことにします。どうせそのうち首謀者か祐樹から連絡があるでしょうし。 「えっと……怪我したら嫌なので黙ってましたけどぉ、これは一体どういうことなんですか?」 「…………」 「聞いてますぅ?」 「…………」  若干知能指数を下げて対話を試みるも、返答は一切無し。余計な会話はしないプロフェッショナルの鑑ですね。まぁ暇なので適当にベラベラ喋りましょう。 「それにしても暑いですねぇ。お水、貰ってもいいですかぁ?」 「…………」 「えぇ~ダメなんですかぁ? 喉渇いたんですけど」 「…………」 「というかここ何処なんですか? ねぇってば」 「……チッ、水ならやるから黙っていろ」 「はぁい」  トン、と私の目の前にペットボトルが置かれる。これは這いつくばって飲めということか。 「あのぉ、両手塞がってて飲めないんですけど」 「…………妙な動きはするなよ」 「はぁい」  後ろ手に組まれた拘束具の鍵がカチャンと外され、漸く私の腕が解放された。締められていたところが若干赤くなっていたので、摩りながらペットボトルに手をつける。    ここまで一切の抵抗をしていないにも関わらずこの警戒心。命令だからというのもあるだろうが、これはなかなかに手強い。  ぬるいですね、この水。 「! ジルクレド様からお電話です」 「代われ」  大して乾いていない喉の渇きを潤していると、どうやら敵の親玉から連絡が入ったようだ。その他の黒服に対する対応を見る限り、やはり私に水を渡した男が司令塔か。  やがて祐樹が通話画面に映り、石動と呼ばれた男が私に喋るよう促してきた。さて、適当に受け答えしますか。  ☆ ☆ ☆  通話を終えて一瞬の静寂が戻る。とりあえず祐樹が建前上候補者レースから脱落した事により、私は解放されるてらしいですが、そこまで上手くいくかどうか。口封じをしに来る場合も十分あり得る。  バカ女を装っていたこともうっかりバレてしまいましたし。ついうっかり。てへ。 「電話の通りだ。疲れただろう、すまなかったな」 「そちらも仕事ですし、怪我もしてませんから」 「……こちらだ」
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