変わらない現実と変わりゆく日常

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『状況説明を』 「俺が許婚候補から降りないとお前が多分やばい目に遭う」 『具体的には?』 「どうなんだ?」  急にそんな冷静沈着になって大丈夫なのかと思いつつも、ユメの疑問を銀髪にぶつける。もちろん聞かずとも結果はわかってるので、ユメと俺の時間稼ぎだ。 「想像に任せよう」 「デコピン一発で済むってよ」 『それだけの為にわざわざ誘拐なんて暇なんですか貴方達は?』 「…………」  余り感情を見せなかった銀髪も段々と苛立ってきたようだ。努めて無表情を装ってるが、煽りのプロの俺に言わせりゃバレバレだぜ。 「貴様達、私がこうして交渉の場を設けている意味がわかっているのか?」 「拉致っといて一択条件選ばせようとしといて交渉もクソもねぇだろ」 「では終わりだ」 「おいユメ。主犯がキレそうだから真面目にやろうぜ」 『勝手にふざけたのは貴方ですがね。そもそも貴方の答えは決まってるのでは?』 「まぁな」  やり口は二つある。一つ目は候補は降りずに、こいつらにバレないようにユメの現在地点を聞き出して実行部隊をぶっ潰す。二つ目は録音するであろう俺の言葉をクリスには真意が伝わる言葉で話すか。ただ一つ目はやろうと思えばできるが、だとしたら何故ユメがむざむざと捕まったのかが分からなくなる。こいつは絶対無意味なことはしないからな。二つ目も暗号とか決めてないからクリスに伝えるのがインポッシブルな上に、今のクリスにちゃんと伝えても無意味かも知れないってことよ。  うーむ……。 『とはいえ貴方の答えなど無価値です。たかが一国の姫様と世界の至宝である私、どちらを選ぶかなど自明の理でしょう』  こいつ『合わせなさい』とか言った割に全然建設的な提案してこねぇんだけど。あ? 前ページのセリフの一文字目ずつ読んでみろ。 「分かったよ、降りれば良いんだろ降りれば」 「! 今の言葉、偽りはないな?」 「ねぇよ。でも条件があるぜ」 「またくだらない話ならば一片の容赦もしないぞ」 「まずユメを安全に無傷で解放しろ。それと他の奴にも二度とちょっかいかけるな」 「条件というのには妥当だ。安心しろ、元より貴様など候補でなければ私にとっては路傍の石にすら劣る無価値な人間だ」  無価値無価値って一日で何回聞かされればいいんだよ。 「あと俺からも一つ。約束が違った場合あらゆる手でお前をぶっ潰す」
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