三.

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††††††††††† 暗闇の中に浮かぶ、美しい満月。 そんな満月を、屋根の上から眺める人物がいた。 傍らには酒の入った瓶、そしてその手には酒がなみなみとつがれた皿。 黒い頭巾を少しずらして口元をあらわにし、そうして酒を流し込む。 「―――まぁまぁだ。」 そう言いながらも、さらに酒をつぐ。 お酌してくれるような人物が周りにいるわけがないので、自分で好きなように月見酒をしていた。 「―――どうせ、『下戸だ』とか言って飲まないからな……」 そう言って、再び酒の入った皿に口をつける。 仕事の報酬として貰った酒だったが、やはり美味くもまずくもない味である。 「それなりに値がはるから、いいものかと思いきや―――地味にハズレか……」 と言いつつも、グビグビ飲むその人物。 何だかんだ言いつつも、酒好きの(さが)で止めることはできなかった。 .
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