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さて、今のこの状況―――どう説明したらいいのだろうか。
まず背中に感じるのは、長年風雨にさらされ続けているせいでくすんでいる壁。
そして周りはと言うと、暗くてよくわからない。
慌てて逃げたせいで、迷子になってしまったというオプションつきだ。
そして、目の前には―――
「おい……」
まるで周りに溶け込むような、真っ黒な出で立ちの人物。
「聞こえないのか?」
「ひっ……」
一歩近付かれるたびに一歩下がった結果、もうこれ以上後ろに行くことはできない。
ならば横に移動しようとしたのだが、おもむろに黒い腕に囲まれたせいでそれも叶わない。
シャラは半泣きの表情を隠すように着物に顔を埋め、あの爽やかな香りで何とか心を落ち着けようとする。
しかしそれを防ぐように、黒い手によって顎を掴まれてしまった。
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