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そして無理矢理顔を上げさせられる。
「あんた……」
顔全体が隠れているせいで、どこを見たらいいのかわからない。
それでもシャラは正面を見据え、小さく震えながら身をかたくしていた。
そんなシャラに、淡々とした声が響く。
「正直に答えろ。」
「…………」
抑揚のない声音にも関わらず、何故か恐怖がシャラを覆う。
ただ顎を掴まれているだけなのに、まるで金縛りにあったように動けなくなっていた。
「その着物―――どこで手に入れた?」
「っ……」
一瞬低くなったその声に、シャラはビクリと体を震わせる。
それと同時に、あの着物を強く握りしめた。
「これは……」
もしや、この着物を盗もうとでも思っているのだろうか―――
シャラは恐怖で震えながらも、警戒を強くしていく。
「この、着物は……」
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