三.

8/19

6001人が本棚に入れています
本棚に追加
/646ページ
着物ごと自身を抱きしめ、シャラは目の前の人物をきつく睨みつける。 「―――ある人に、いただきました。」 そう言って、シャラは唇を噛む。 あの人は、売ればいいと言っていたけど――― そんなシャラの思いを知ってか知らずか、顎からゆっくりと手が外れる。 「あんた―――何をしたんだ?」 「っ……」 先程までとは違う、どこか呆れたような声音。 手が外れた瞬間顔を逸らしたシャラは、訝しげに視線を戻した。 そこには、やはり黒い人物がいて――― 「その着物の持ち主を知っている。 あのお人よしが、自分の着物を渡すとなると……」 「あの人を知っているのですかっ?!」 黒い人物の言葉を最後まで聞くことなく、シャラは勢いよく掴みかかる。 その瞬間着物が(はだ)けたが、気にする余裕などなかった。 「教えてください、あの人は……」 .
/646ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6001人が本棚に入れています
本棚に追加