ぶちまけポップコーン

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 開園と同時にダッシュで世のお父さんや、彼女の為に人気アトラクションを確保しようとする兄ちゃん連中をウサイン・ボルトの張りの走りでぶち抜き。  馬図羅伊兎(バズライト)と言う宇宙隊員と共に異星人をバカスカ撃ちまくるアトラクションで「4て数字は縁起が悪いんだよお!」と絶叫し、酢符裸津主(スプラッシュ)と言うアトラクションでは一人で1番前を陣取り、「一人で夢の国にいる俺の涙腺がスプラッシュだっつの!」と叫びながら落下。  時に絶叫、時に涙、空に吠え、襲いくる絶望感と戦い、あっという間にお昼となった。  前半戦を終わり、キャラメルポップコーンをバケットで買った僕は、とお城前の広場のベンチに座っていた。  「夢を! 俺にドリームを!」  周りの視線など気にしない。僕は今日、全力で楽しんでやるんだと決意しているから。  と、ぴっくりする程口にポップコーンを詰めようとバケットを開けようとしたが。 「蓋が……かたいっ! 糞! ポップコーンまで僕を虚仮にするのか?!」  バケットを両膝でガッチリとホールドし、渾身の力を込めて蓋をこじ開けようとした時。  「ねえ」  声が、聞こえた。  瞬間。  両膝の力が緩み、バケットは勢いよく宙を舞い。  “ポップコーンがぶちまけられた”。  まるで雨のように降り注ぐその中で、 その娘は、立っていた。 それが、僕の、最初の夏の思い出。
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